カミキリムシ 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 高次構造形成研究グループ 竹市研究室
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カドヘリン研究の新展開:微小管マイナス端結合分子・Nezhaの発見

数年前に、『Nezha』という新規分子についての報告をさせていただきました。現在、Nezhaの解析は、当研究室のメインテーマの一つです。ここでは、そのNezha発見の流れをご紹介させていただきます。

p120カテニンの役割は何なのか?

これまでに細胞間接着におけるカドヘリン―β、α-カテニン―アクチン骨格系の役割はよく研究が進んできた一方、アクチン骨格にリンクしないp120カテニンの働きは、よく分からないままでした。Nezhaはp120カテニンの解析を進める中で発見されました。

カドヘリン‐アクチンシステム

p120カテニン結合分子PLEKHA7

p120カテニンの機能を調べるために、p120カテニンに結合するタンパクを探しました。大腸がん細胞株Caco2細胞でGSTプルダウンを行うと、p120カテニンのN末結合分子としてPLEKHA7が見つかりました。また、Caco2の免疫染色を行うと、PLEKHA7は細胞間接着部位に局在していることも分かりました(下図E)。

p120カテニン結合分子PLEKHA7

PLEKHA7結合分子Nezha

PLEKHA7の機能を調べるために、PLEKHA7の結合分子を探すと、新規分子が取れてきました。私たちはその分子をNezhaと命名しました。NezhaはPLEKHA7と共局在して細胞間接着部位にも存在しており、PLEKHA7をノックダウンすると、細胞間接着部位の局在は消えました(下図D)。この結果から、NezhaはPLEKHA7依存的に細胞間接着部位に局在することが分かりました。

PLEKHA7結合分子Nezha

PLEHA7、NezhaはE-カドヘリンによる細胞間接着を制御している

PLEKHA7、Nezhaをノックダウンすると、E-カドヘリンの細胞間接着部位への局在が乱れました。よって、PLEKHA7とNezhaはE-カドヘリンによる細胞間接着の形成に重要であることが分かりました。

PLEKHA7ノックダウン Nezhaノックダウン

Nezhaは微小管マイナス端結合分子だった

Nezhaは細胞間接着部位だけでなく、細胞質にも多数存在しています。それらをよく観察してみると、微小管の末端に局在していることが分かりました。さらに、微小管プラス末端結合分子のEB1の局在と比較してみると、Nezhaは微小管のマイナス端結合分子であることが明らかになりました。これまで、微小管のプラス端結合分子は多数知られていましたが、マイナス端結合分子として同定されたはNezhaが初めてとなりました。(ちなみに、当研究室在籍時にNezhaを発見した孟さんいわく、細胞内に単に散在しているように見えたNezhaが、微小管末端に局在していることに気が付いた瞬間は、本当に興奮したそうです。研究者として一番、幸せな瞬間ですよね~。)

Nezhaの微小管マイナス端への局在

まとめ

カドヘリンが発見されてから約30年後の今になり、p120カテニン、PLEKHA7、Nezhaを介した微小管も細胞間接着に関与しているという新しい機構が明らかになりました。当研究室では、さらにNezhaの細胞レベル、生体内レベルでの機能、役割について解析を進めています。

カドヘリン‐Nezha-微小管システム

ちなみに、Nezhaという名前は、『西遊記』や『封神演義』などに登場する中国の有名なキャラクター『哪吒』に由来しています。武器を持っている『哪吒』の姿が、微小管の末端に結合している分子のイメージに似ている、という理由からとのこと。興味のある方は画像検索で哪吒をチェックしてみてください。

孟さん&竹市先生

★Nezha発見の論文のファーストの孟さん(左)と竹市先生(右)