独立行政法人 理化学研究所 神戸研究所 発生・再生科学総合研究センター
2003年12月22日


ADAMプロテアーゼの糖鎖修飾が器官形成に必須の役割
─ ADAMプロテアーゼが関与する疾患のメカニズム解明に手がかり ─
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細胞移動研究チームの西脇清二チームリーダーらは線虫を用いた研究で、蛋白質の糖鎖修飾が器官形成過程の細胞移動の調節に必須であることを明らかにした。この研究は科学技術振興機構・名古屋大学の松本邦弘教授、独立行政法人産業技術総合研究所の地神善文博士の研究グループとの共同研究で進められた。この成果は英国の科学雑誌『Nature Cell Biology』(2004年1月号)に掲載される。

動物の器官形成では細胞同士の情報交換、接着や移動などが適切に行われる必要がある。このような目的で細胞は様々な蛋白質やそれを分解する蛋白質分解酵素などを細胞外に分泌する。これらの蛋白質の多くは、糖でできた分子の鎖、つまり糖鎖を表面にもつことが知られ、その機能的重要性が指摘されてきたが、生体内での機能はよく分かっていなかった。
西脇チームリーダーらは線虫(C. elegans)を用いた以前の研究で、ADAMプロテアーゼと呼ばれる分泌型蛋白質分解酵素の一種であるMIG-17が生殖巣(哺乳類の卵巣や精巣に相当)の形態形成において必須の役割を果たすことを明らかにしていた。今回の研究では生殖巣形成においてMIG-17と共同して機能する新規蛋白質MIG-23を発見した。MIG-23は細胞内のゴルジ体で機能するヌクレオシド2リン酸分解酵素(NDPアーゼ)であり、MIG-17が細胞から分泌される過程で糖鎖を付加する働きがあることを解明した。さらに、このMIG-23によるMIG-17の糖鎖修飾がMIG-17の機能に必須であることが明らかになった。

MIG-17とMIG-23の変異体は生殖巣の形態に異常を示す

MIG-23の変異体ではMIG-17の局在に異常がみられる

これらの研究成果は、蛋白質の糖鎖修飾が器官形成という高次現象に重要であることを具体的に示した点で重要であると同時に、ADAMプロテアーゼに関連する種々の疾患や病態のメカニズムを明らかにする重要な手がかりになることが期待される。


掲載された論文 http://www.nature.com/cgi-taf/DynaPage.taf?file=/ncb/journal/v6/n1/abs/ncb1079.html

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