独立行政法人 理化学研究所 神戸研究所 発生・再生科学総合研究センター
2004年10月7日


マウスES細胞用の無血清培養法を確立
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この度、フィーダー細胞を用いずにマウスES細胞の培養が可能な無血清培地が発売された。これは、丹羽仁史チームリーダー(CDB、多能性幹細胞研究チーム)らが開発、特許化した技術で、理化学研究所とのライセンス契約の元で大日本製薬が販売を開始している。

細胞を生体から分離して試験管内で培養する技術の確立は、生命現象の分子・細胞レベルでの解析・操作を可能とし、20世紀の生物学に大きな進歩をもたらした。なかでも「自己複製能」と「多分化能」を併せもつ幹細胞は、未分化状態を維持したまま半永久的に培養できると同時に、特定の条件下で特定の細胞種に分化誘導する事が可能になってきた。その為、幹細胞の培養法の確立は特に大きな意味を持ち、再生医療への応用が期待されている。

通常、マウス胚性幹細胞(ES細胞)の培養には、栄養源としてウシ胎仔血清が添加され、また未分化状態を維持するためにフィーダー細胞と共培養する必要がある。しかし、ウシ胎仔血清やフィーダー細胞の分泌物には未知の因子が多く含まれ、実験系に未知の要素が入るという不都合があった。さらに将来の医療応用を考えた場合、ウイルス等の混入を防ぐために、未知因子を含まない培養系を確立する事が必須と考えられてきた。

丹羽らが今回開発した、血清やフィーダー細胞を用いない培養法により、未知因子を全て排除した環境でマウスES細胞を培養する事が可能となった。この技術は、神戸医療産業都市に集積するバイオベンチャーの一つ、ステムセルサイエンス社と共同で製品化され、大日本製薬がライセンス契約によりCulticellとして2004年7月から販売を開始している。丹羽らのこの成果により、各種誘導因子の研究がより正確、詳細に行えると共に、医療応用の実現へ大きな道を開き、基礎研究と応用研究を繋げるトランスレーショナルリサーチの一つのモデルを示したといえる。





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