独立行政法人 理化学研究所 神戸研究所 発生・再生科学総合研究センター
2005年4月28日


上田泰己チームリーダーがゴールドメダル賞を受賞
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システムバイオロジー研究チームの上田泰己チームリーダーが、東京テクノ・フォーラム21が選定する「ゴールドメダル賞」を受賞した。ゴールドメダル賞は、バイオテクノロジーやナノテクノロジー、IT分野で活躍する気鋭の新進研究者に贈られ、今年で第11回を数える。

受賞テーマは、上田氏が大学院時代から進めてきた「睡眠や生命のリズムをつかさどる体内時計のシステム生物学的解明」。私たちの体には約24時間周期で時を刻む「体内時計」があり、睡眠やホルモン分泌など様々な生命現象を制御している。上田らは、この時計の周期的な振動が複数の遺伝子からなるネットワークの働きによって生み出されることを「システム生物学」の手法によって解明してきた。2000年以降、マウスやヒトを含む多くの生物のゲノム解読が終了し、ポストゲノムの時代に突入している。これまで個々の遺伝子の働きに主眼が置かれてきたが、ポストゲノムでは、多くの遺伝子がどのように影響し合って働いているのか、つまり生命現象を遺伝子ネットワークの立場から理解しようとするシステム生物学が注目されている。

上田らは、マウスをモデルに体内時計を構成する遺伝子ネットワークの解明を目指し、DNAチップによる遺伝子発現の包括的解析と、大量の発現データから有用な情報を抽出するコンピュータ解析を組み合せた。この方法で、体内時計の司令塔とされる視交叉上核と肝臓の組織から24時間周期で変動する数百の「時計遺伝子」及び「時計関連遺伝子」を見出し、2002年に発表した。さらに今年に入ってから、この時計遺伝子のうち16の遺伝子が時計の心臓部、つまり振動子の役割を担う転写制御ネットワークを形成していることを明らかにした。

体内時計の乱れは、不眠症や鬱病といった多くのリズム障害と関係している。上田らの方法が将来人に応用されれば、医者の長年の夢であった「体内の時刻の判定」が可能になるかもしれない。さらには体内時計を補正したり、最も有効なタイミングで薬剤を投与したりと、期待される医学への応用も幅広い。

今回のゴールドメダル賞は上田泰己チームリーダーの他に、産業技術総合研究所の鎌田俊英氏(有機半導体デバイスの開発)、東京大学の古澤明氏(量子テレポーテーションネットワークの創成)に贈られ、4月14日に東京都内で授賞式が行われた。



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