独立行政法人 理化学研究所 神戸研究所 発生・再生科学総合研究センター
2008年2月8日


第15回CDBミーティング
‘Advances in Cyclostome Research’を開催

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CDBミーティングが、’Advances in Cyclostome Research’をテーマに1月24〜25日の2日間に渡って開催された。ヤツメウナギやヌタウナギを含める円口類の研究の視点から見た脊椎動物の起源や進化について、最新の知見を交えた講演と活発な議論が行われた。参加者の一人でCDBの研究員(形態進化研究チーム)、太田欽也さんから以下のようなコメントが寄せられた。

ミーティングの参加者

1月24日、CDB名物の寒風吹きすさぶ中、世界中から初期脊椎動物進化研究に熱い思いを持つ研究者達が終結しました。タイトルはAdvances in Cyclostome Research。このミーティングの主旨はCyclostome(円口類)を通して、脊椎動物の起源や進化について考えるというものですが、円口類に焦点を当てたミーティングは国内外を見ても比較的珍しく、集まった演者、聴衆ともに日ごろの学会にはない、濃厚な内容を期待していた様子でした。そして実際に、ゲノム進化学、分子進化学、比較発生学、形態学、内分泌生理学、古生物学などの全く違った分野の研究者が、それぞれの違った視点からヌタウナギ、ヤツメウナギ、ナメクジウオそして古生代の甲冑魚などについて熱く語るという期待どおりの運びとなりました。

とりわけ、日ごろ甲冑魚の化石を見ることのない私にとって、古生物学者の皆さんの研究は非常に印象的でした。なかでも、Gai氏のサイクロトロンX線CTスキャンを用いたガレアスピス(初期脊椎動物進化を考える上で重要な化石種)の超高解像度観察に関する発表には、これからの中国における古生物学の発展を予感させるものがありました。ちなみに、彼は今回のミーティングの最年少のスピーカーなのですが、強烈な個性の持ち主で、倉谷氏、Mallatt氏、Ahlberg氏そしてJanvier氏などの世界の初期脊椎動物進化研究の権威たちとの議論に果敢にも参加する様子は、その場に居合わせた聴衆を唖然とさせていました。

ゲノム進化学分野でもヤツメウナギのゲノムプロジェクトなどが進行していることもあって、活発な討論がなされました。とりわけ、「円口類が自然分類群か否か?」そして「ゲノム重複のタイミングはいつか?」という2つの点についてオーガナイザーのMcCauley氏から問題提起がなされ、分野を超えて互いの意見を交換することになりました。ただ、これらの問題については各々の研究分野の間に理解の溝があり、最終的なコンセンサスは得られませんでした。やはり、それぞれ、熱い思いで研究に取り組んでいるだけあって、簡単に歩みよれないのが現実なのでしょう。

ただ、学術的には違った考えを持っている研究者たちですが、互いの個性的な性格や研究スタイルに対しては好意と敬意をもっており、コーヒーブレイクやバンケットの際には和気あいあいと歓談を楽しみながら、互いの研究分野の今後の可能性について情報交換を行っていました。おそらく、今回のミーティングを終えて、参加した全員が異なる分野に対する理解の重要性を改めて認識したことと思います(そうあってほしい)。ミーティングの最後にMcCauley氏が「もう一回こういうミーティングをやろうか?でも1月はやめておこうね」といって締めくくっていました。さすがに熱い思いを持った初期脊椎動物の研究者達にもCDBに吹き付ける1月の強風は少しばかり寒かったのでしょうか…。


 
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