独立行政法人 理化学研究所 神戸研究所 発生・再生科学総合研究センター
2008年10月6日

高校生物教職員研修会「オーガナイザー実験体験講座」を開催
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理研CDBにおいて高校生物教職員を対象にした研修会「発生生物学におけるオーガナイザー実験体験講座」が平成20年10月4日〜5日の二日間にわたり開催された。


このプログラムは昨年度から試験的に開始されており、今年は八杉貞雄帝京平成大学教授(首都大学東京名誉教授)がオーガナイザーを務め、日本発生生物学会との共同主催、神戸市教育委員会との連携により行われた。
プログラムはカエル、ニワトリ、ゼブラフィッシュの各胚を用いた実験実習と、東京大学平良眞規准教授、理研CDB丹羽仁史チームリーダーによるレクチャーを中心に構成され、主に兵庫、大阪、京都の3府県下の高校生物担当教職員30名が参加した。企画段階から高校で生物担当として教鞭をとる教員3名が実行委員として加わり、発生生物学会、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの代表者とともに実験実習などの内容の構成に携わった。
実験実習では、発生生物学における歴史的実験であり且つ高校生物教科書でも必ず取り扱われるオーガナイザー部位の移植実験を、カエル胚、ニワトリ胚を用いて行った。また、ゼブラフィッシュ胚ではオーガナイザー分子のインジェクション実験を行った。実習には東京大学理学系研究科平良眞規准教授を始め、同大学大学院生や理研CDBの日比正彦チームリーダー、同Guojun Shengチームリーダー、研究員ら、カエル、ニワトリ、ゼブラフィッシュを実際に研究するスタッフがそれぞれ指導に当たった。
更に発生生物学における先端的の知見も取り入れるため、平良眞規准教授による「オーガナイザー研究の新展開」、理研CDB多能性幹細胞研究チーム丹羽仁史チームリーダーによる「幹細胞の発生生物学と応用」と題したレクチャーもプログラムに加えられた。
オーガナイザー移植実験は教科書に記載されている実験ではあるものの、実際に体験したことのある高校教職員はほとんどいない。参加した教職員からは「毎年生徒に教えていることを、自分の手で実験出来るのは非常にうれしい」「実験は文字に勝る」といった声が聞かれた。また、移植実験は顕微鏡下の細かい操作であり、手技的に難易度が非常に高いため「教科書に明記されている実験が、ここまで難しいとは吃驚した」という感想もあり、SpemannとMangoldによる歴史的実験の偉大さを改めて実感していた。


左:慣れない顕微鏡操作に悪戦苦闘!
右:見慣れた卵から胚の摘出


教科書は教育上生徒が知るべき内容を客観的に記載する書であるが、その性質上事実の羅列になる場合がある。この研修会で、教科書に記載されている科学的事実の発見の経緯と苦労を知り、実験の面白さを身を以て体験することで、生物学、科学に対する新たな知見を得ることが出来る。この研修会が参加者にとってよい経験となり、高校での授業においてよい影響を与えることを期待する。


参加した教職員、実習講師・TA全員で
皆様ごありがとうございました

なお、理研CDBでは高校教職員向けの研修会を来年以降も開催予定である。




 


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