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発生・再生科学総合研究センター  
 
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再生は生物が失った体の一部や機能を取り戻すことをいいます。再生のメカニズムは生物種によって異なりますが、新たな細胞を補充することで傷の修復や組織の維持が行われ、なかには四肢や臓器、体全体をも再生できる生物もいます。
再生現象の研究は、ヨーロッパの科学者たちが甲殻類やヒドラ、イモリなどの再生パターンを記述した18世紀まで遡ることができます。これらの研究が引き継がれ、現在CDBでは高い再生能力をもつプラナリアなどの生物を用いて細胞、分子レベルでの研究が行われています。ここでは再生研究の理解に必要な用語やバックグラウンドを説明します。
 
再生のプロセスはノーベル賞遺伝学者であるT.H.モーガンによって2種類に分類されている。形態調節(morphallaxis)と呼ばれるプロセスでは、細胞増殖を伴わずに既にある細胞の再編成によって失われた部分が修復される。そのため再生した構造や個体は元のものより小さいが後に成長して回復することが知られている。形態調節はヒドラなどでみられる。一方、付加形成(epimorphosis)と呼ばれるプロセスでは、新たな細胞による欠損部の補填が必要となる。ヒトを含む多くの生物種では、怪我や病気に反応して幹細胞や前駆細胞が活性化され新たな細胞を供給する。イモリなど生物種では、付加形成による再生プロセスの最初に新たな幹細胞や前駆細胞が生成されることが知られている。またある種の生物は肢などを失っても、それらの構造全体を付加形成によって再生することができる。

さらに興味深いことに幾つかの生物種は、挿入再生というプロセスによって失った組織片を再生することができる。このことはこれらの生物が組織や器官に損傷を受けたときに、損傷を受けたという情報のみでなく体のどの部位が損傷を受けたかを認識し、必要な部位だけを再生できることを示している。この再生メカニズムは明らかになっていないが、生物は体の組織や器官の位置を適確に制御するための「位置情報」を備えていて、この位置情報を元に必要な組織や器官が再生すると考えられる。
体を構成する細胞の多くは高度に分化し、特定の機能と特性をもっている。これらの細胞は一般的に他の種類の細胞を新たに生み出すことはできない。ところが再生現象においては、一度分化した細胞が脱分化し他の種類の細胞を生み出す能力を再獲得することがある。このような脱分化による再生はトカゲやサンショウウオなどで見られる。例えば、眼球のレンズを損傷した際に、色素上皮細胞が脱分化を経てレンズの細胞に生まれ変わることが知られる。
一般的に進化の程度が低い生物ほど高い再生能力をもつことが知られている。ヒドラやヒトデ、扁形動物などの比較的単純な生物の多くは、いくつかの断片に切断されたときにそれぞれが個体を再生する能力をもつ。しかしザリガニのような比較的進化した生物では肢や尾などの再生が限度で、ヒトにいたっては組織の一部が再生できる程度である。CDBでは生物の再生を可能にするメカニズムの解明を目指すとともに、再生能力の違いと進化の関係についても研究を進めている。

再生医学の分野で現在最も注目されているのが「幹細胞」である。幹細胞は高い増殖能力と多様な種類の細胞に分化できる多能性を兼ね備えている。この性質によって、幹細胞は発生過程で体中に様々な細胞を供給し、成体になってからも日々の老化によって失われた細胞や組織を補填している。動物が怪我や病気によって失った組織を再生する際にも幹細胞が重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。これらのメカニズムを解明し、ヒトの再生能力の向上を目指すのが再生医学だ。試験管内に培養した多能性幹細胞、ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(誘導多能性幹細胞)の増殖と分化をコントロールし、創薬研究や移植医療に有用な細胞をつくり出そうとする研究が進んでいる。例えば、ドーパミン神経細胞をつくってパーキンソン病治療に利用する、インシュリン産生細胞をつくって糖尿病治療に利用する、といったシナリオが考えられる。また、成体内に存在する幹細胞、体性幹細胞を利用して再生能力を上げようとする研究も行なわれている。