1回勉強会報告

科学コミュニケーション −誰のための、何のための活動か?

講師:京都大学人文科学研究所/大学院生命科学研究科 加藤和人先生

 


おもろい研究者創出プロジェクト第一弾として、面白く・楽しく科学を伝える手法や考え方を学ぶ勉強会第1回を平成21年8月20日(土)、理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターにて開催しました。加藤和人先生(京都大学人文科研究所・文化研究創生部門准教授、経歴はこちら)を講師に迎え、前半は科学コミュニケーションの概要、その目的や意義、加藤先生の研究室の取り組みなどについて講義があり、後半は参加者によるグループディスカッションを行いました。参加者は、研究者、学生、社会人を含む様々なバックグランドを持つ人々が集まり、「異種交流」の良い機会ともなりました。

 

次回第2回勉強会は9/13(日)開催です(詳細)。

参加受付中です!お申し込みはこちらから。

当日の概要

第1回勉強会を開催

CDB広報国際化室おもろい研究者創出プロジェクト第一弾の勉強会第1回を開催しました。

加藤和人京都大学准教授の講演を軸に、参加者のディスカッションや、交流会まで充実した内容で盛り上がりました。


日時・場所

平成21年8月20日(土)

14:00~16:00

理化学研究所 

発生・再生科学総合研究センター

A棟7Fセミナー室

参加人数

17名

 

○加藤准教授の講義概要

<科学コミュニケーションとは何か?何のための活動か?>

1.理解増進・普及活動 

2.科学研究の社会への説明責任 

3.文化としての科学を根付かせる 

4.政策や倫理的課題への対応について、非専門家も参加して考える

という4つのポイントが挙げられました。

日本はヨーロッパに比べると20年遅れでこの分野が注目されるようになり

研究機関や大学に科学コミュニケーションや広報を担当する部門が多く

設置されるようになりました。一方で、国或いは官主導のこの動きは、

1.理解増進・普及活動へに偏りのあることも指摘していました。


<京都大学加藤研究室での取り組み>

 加藤研究室での取り組み紹介は非常に興味深いものでした。2002年からスタートした、ゲノム研究者と市民との双方向の交流のためのイベント「ゲノムひろば」は、これまで全国各地で13回開催され、多くの市民、そして研究者が参加し、意見交換が行われました。最新科学を伝える場となっただけでなく、研究者が非専門家の反応や意見に直接触れられたことで、研究者としての責任を感じ、社会勉強の場になったという意見もあり、研究者にとっても有意義な時間となったようです。また、加藤研究室の大学院生が中心になって作成した「一家に1枚ヒトゲノムマップ」は、これまでに14万枚が配布され、高校生物の副読本に掲載されたり科学館の常設展示として採用されたりなど注目を浴び、2008年7月には英語版がリリースされました。

<グループディスカッション意見まとめ>

(①〜④はグループ番号)

1.日本においてどのような活動が必要か?

①ボトムアップは必要だが、「どこまで・誰を」は不明確
 → 実は社会としてそれほど必要とされていないのではないか?
先進的なことは感情的な反対が起こりやすいので、市民が偏向した情報に扇動されないための知識は必要。あおられているのを止められる人が必要。

②現場の研究者が科学コミュニケーションに参加する。情熱を伝える。
基礎研究からその応用技術までを一貫して伝える。
サイエンスの文化的価値を子供に伝える。

  一般の人がサイエンスに何を求めているのかを汲み上げる。

  一般の人とコミュニケーションする上での共通言語が必要。

③異分野コミュニケーションするための教育(大学・大学院の授業に取り入れる)
 → まずは研究者から市民への一方向でもいいのではないか?

市民からのフィードバックは重要でない。
コミュニケーターのキャリアパス構築

④自分の仕事のおもしろさを伝える。
英語的表現(専門用語)を日本語化して、もっとわかりやすく簡単に表現すること。


2.個人の研究者として何をしたいか?

① 科学コミュニケーションの場をもっと提供してほしい。

③ 科学の面白さを多くの人と共感したい。

④ 研究費を多くもらうためのプレゼンテーションのスキルアップをしたい。


  1. ○参加者によるグループディスカッション

  2. 加藤先生の講義の最後で、

  3. 1.日本社会においてどのような活動が必要か

  4. 2.あなた個人は研究者として何をしたいか、それぞれの活動は誰のためのものか

  5. という問題が投げかけられ、これについてグループディスカッションを行いました。どのグループも議論が白熱し、時間が足りないと感じた人が多かったようです。

  6. グループでの意見は班ごとに発表し、全員でシェアしました。

勉強会後には加藤先生を囲んでの交流会が行われました。加藤先生曰く、「うんどんこん」が大切とのこと(「運」と「どんくささ」と「根性」)。科学コミュニケーターであろうが、研究者であろうが、いろんな立場の人に必要な要素かも知れません。科学コミュニケーションを始め様々な活動を一度経験して何が自分に向いていて何が向いていないのか客観的に見ることが出来れば、研究の幅を広げることに繋がるかもしれません。また、科学者だけで行うより、製作家・音楽家・学芸員など、あらゆる専門家とコラボすると、広がりのある違ったものができあがります。自分が所属する分野のみにとらわれず、広い視野で様々な可能性を模索していきたいと感じました。

おもろい研究者になりませんか勉強会事務局スタッフ 貞本和代

(発生・再生科学総合研究センター 網膜再生医療研究チーム)

○参加者へのアンケート結果

Q1.今回の勉強会の感想をお答えください

・様々な立場の方(ライター・事務・技術者)からの意見が聞けたのが良かった

・科学コミュニケーションについて、なんとなく広報に近いようなイメージがあったのですが、幅広く様々な対象・目的があるのだと勉強になりました。

・討論の時間が足りず、少し消化不良でした。が、消化不良を感じる程度に盛り上がったということだと思います。

・大変興味深かった。最終的にはどのような具体策があるのか、議論できなかったのが残念。

・同じように問題意識を持っている人がいると分かって良かった。


Q2.今回の勉強会で得られたことをお答えください

・どのような活動が日本社会に必要かを考えられたのは良かった。

・今回は特に生命科学分野がメインでしたが、他の分野でも必要ではないか。またなぜこのような活動が必要なのかという根元的なことを考えさせられた。

・向き不向き、社会から何が必要とされているか、見極めていきたい。文化としての科学という視点が大事だと感じました。

・大学の研究として確立されていることを今回知ったのが新鮮でした。

・色々な立場の人がいたにも関わらず、思ったより皆同じような考えを持っていた。


Q3.今後このような勉強会に参加したいですか

 Yes:15人  No:1人


Q4.あなたは科学を広く伝えることの必要性を感じますか

 Yes:16人  No:0人

 <Yesの理由>

・偏見が多いから

・研究の必要性を世の中に伝えるため、科学技術を正しく使う方法を伝えるため、若者の科学離れを防ぐために必要だと思います。

・税金を使っている以上、納税者への説明は必要。

・科学者自身が面白いと思っていることを直接伝えることが必要。

<どのような立場の人が伝えるべきか>

・科学を理解している人なら誰でもよい

・研究者本人だったり、コミュニケーターだったり、ケースbyケースでよいと思います。

・コミュニケーションが得意な研究者

・社会のよりよい発展に科学とその理解が必要だから、いろいろな立場の人