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過去のイベントについてご案内いたします。

Category その他
Date and Time 2014-02-20 16:30 - 17:30
Venue C-S401
Speaker 村田 卓也
Affiliation 理化学研究所バイオリソースセンター 新規変異マウス研究開発チーム
Title The β-cateninC429S mice cause infertility with spatiotemporally sustained Wnt signal in internal genitalia
Poster click here to download(PDF)
Host Yasuhide Furuta
要旨 当研究室では、一万系統にものぼるENU点突然変異マウスライブラリーからターゲット遺伝子の点突然変異を高速に探し出し、当該凍結精子から点突然変異マウスを個体復元して遺伝学的に解析する、「ENU-based gene-driven mutagenesis」を展開してきた。
今回は、β-カテニンの429番目のシステイン残基がセリンに変異したマウス系統を解析した結果について紹介する。β-cateninC429Sでは、自然交配で不妊となる以外に目立った表現型はない。不妊といっても、IVFをおこなうと正常な産仔を得ることが出来るため、精子・卵子が異常となったわけではない。不妊の原因は、内性器の形成異常、すなわち、オスの精嚢(精液を作り出す分泌器官)の重複、およびメスの膣閉塞であった。ことオスに関しては、射精ルートが本来通らない精嚢経由に変化することによって精子の受精能が失われると考えられた。発生を遡って調べてみると、精嚢形成と腟形成のそれぞれでウォルフ管と呼ばれる生殖管の尾部側に限定してCanonical Wnt/β-cateninシグナルの異常(持続的なオン)が認められた。β-カテニンはCanonical Wntシグナルの必須コンポーネントとして働くことが知られている。精嚢が重複することや、オス・メスともに尾部側ウォルフ管由来の組織が過形成になることは、Wntシグナルの既知の機能から充分説明できる表現型である。しかし、発生から成体に至るまで体中あらゆる場所で働くWntシグナルにおいて、唯一無二のコンポーネントであるβ-カテニンにC429S変異が生じただけで時空間限定的な表現型が現れることは全く説明がつかない。また、β-カテニンは、進化上多細胞生物全般で高度に保存されているものの、タンパク質中央のアルマジロリピートの機能については驚くほど知見が少ない。7番目のアルマジロリピートに存在する429番目システイン残基がセリンに変異したことによって現れたこれらの表現型は、今後のβ-カテニンタンパク質およびWnt研究に一石を投じるものと考える。
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