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iPS臨床研究:一症例目の移植を実施

2014年09月15日
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理研CDBの高橋政代プロジェクトリーダー(網膜再生医療研究開発プロジェクト)と先端医療振興財団先端医療センター病院の栗本康夫眼科統括部長らが中心に進めている「滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮シート移植に関する臨床研究」において、第一症例目の移植が9月12日に行われた。

この臨床研究の対象となるのは「滲出型加齢黄斑変性」と呼ばれる眼科疾患。網膜下の異常な新生血管と網膜色素上皮(RPE)の傷害を伴い、視力の低下や視野の歪みなどが生じる。今回の研究では患者自身の皮膚細胞からiPS細胞を作製し、そのiPS細胞から網膜色素上皮細胞を誘導、さらにシート状に培養して網膜下に移植する。これまでRPEシートの品質・安全性を確保するための様々な研究開発や評価基準の検討がなされ、厚生労働省による審査を経て昨年8月に被験者の募集がスタートした。

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  2. 患者iPS細胞から作製されたRPEシート

作製されたRPEシートは、細胞形態や遺伝子発現、細胞機能の面から生体のRPEと同等であることを確認し、さらに遺伝子導入時に用いたプラスミドの残存がないことや未分化細胞の混入がないことなど安全性を厳密にチェックした上で移植する。これまでの動物を用いた前臨床研究では、iPS細胞由来のRPE細胞に造腫瘍性がないことが確認されており、今回初めてヒトへの移植に至った。

今回の臨床研究は、iPS細胞由来RPEシート移植の安全性の検証が第一の目的であり、既に症状の進んだ患者を対象にすることからも視機能の大幅な改善は期待されていない。高橋プロジェクトリーダーは、「移植手術が無事に終了したことは大変嬉しく、これまで協力して下さった方々に深く感謝しています。ただ、iPS細胞を使った再生医療の第一歩を踏み出したに過ぎません。治療として多くの方に届けられるように歩みをとめずに進みたいと決心を新たにしています」とコメントした。今後、1年の観察期間を経て移植の結果を評価していくという。

関連リンク 滲出型加齢黄斑変性の臨床研究
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