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「高校教職員のための発生生物学実践講座2017」を開催

2017年08月16日
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高校生物教員を対象とした研修会「高校教職員のための発生生物学実践講座」が、8月7日(月)、8日(火)の2日間にわたり開催された。理研CDBはこれまで、日本発生生物学会や兵庫県高等学校教育研究会生物部会と共同で高校教職員向けの講座を毎年開催してきた。本講座の前身となる「高校生物教職員のための発生生物学リカレント講座」から数えて計10回目となる今年は、理研生命システム研究センター(QBiC)を新たに共催に迎え、監修および実習講師を理研QBiCの大浪修一チームリーダー(発生動態研究チーム)が担当。線虫を用いた遺伝学研究を体験するプログラムを実施した。関西圏を中心に全国4都府県から計22名(実習参加者19名、TA3名)の教員が参加した。

  1. 実習の様子
  2. (上、中段)実習の様子
    (下段左から)大浪チームリーダーのレクチャー、久原教授のレクチャー、大浪研究室でのデモ実験、研究室見学の様子

線虫(C.elegans)は生物学研究における主要なモデル生物のひとつで、発生学および遺伝学分野の発展に大きく貢献してきた。全細胞系譜の解明とアポトーシスの発見、RNA干渉(RNAi)の発見、そして緑色蛍光タンパク質(GFP)導入個体の作製、と過去3度にわたり線虫を用いた研究にノーベル賞が授与されている。そこで今回の講座では、線虫を用いた代表的な研究を実体験するプログラムを実施。講座の冒頭には、これまでの線虫を用いた遺伝学・発生生物学研究の歩みと代表的な研究成果について、大浪チームリーダーがレクチャーで紹介した。さらに2日目午後には、特別講師として甲南大学工学部の久原篤教授をお招きし、特別レクチャーを実施。最近話題のトピックスである線虫の走性行動に関する最新の研究内容を披露いただくと共に、高校で実践できる線虫の走性行動解析の実習についてもご紹介いただいた。

実習では、変異株の観察と次世代への遺伝形質の伝わり方を解析してメンデルの法則を確認する王道の遺伝学実習のほか、RNAi(Feeding法)による遺伝子発現抑制と表現型解析、ライブイメージングによる発生過程の観察と画像解析、GFP導入株の観察と、盛りだくさんの内容を体験した。参加教員たちは小さな線虫の扱いに苦心しつつも、熱心に顕微鏡を覗きながら各実習の課題に取り組んでいた。予想と異なる結果が出る場面もあったが、大浪チームリーダーやスタッフらと原因を議論するなどして、うまくいかないこともある研究のリアルな現場を体験できたようだった。また、大浪研究室にて、インジェクションRNAiのデモ実験と、ライブイメージング撮影の様子を見学した。

  1. グループワークの様子
  2. 集合写真

線虫は実験動物としての取扱いが容易で、各高校でも比較的取り組みやすい。11月には、本講座の実践編として、本講座の参加者で兵庫県高等学校教育研究会生物部会所属の教員が主体となって高校生に同様の実験を指導する「高校生のための発生生物学実習講座」の開催も予定されている。

関連リンク 日本発生生物学会(JSDB)
理化学研究所 生命システム研究センター(QBiC)
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