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発生生物学リカレント講座を開催

2015年10月09日
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今年で8回目となる「高校生物教職員のための発生生物学リカレント講座」が、10月3日〜4日の2日間に渡って開催された。この講座は、理研CDBと日本発生生物学会が共同で主催するもので、高校における生物学教育の一層の充実を支援することを目的としている。今年は、発生学の主題の一つとも言える「オーガナイザー(形成体)」をテーマに、アフリカツメガエル胚とニワトリ胚を用いた二次胚誘導の実験や、近年のオーガナイザー研究の進展を紹介するレクチャーが行なわれた。

1日目の午前中には、理研CDBの猪股秀彦チームリーダー(体軸動態研究チーム)がレクチャーを行い、オーガナイザーの実体である背側因子が胚の中を拡散して濃度勾配を形成し、背腹軸に沿ったパターン形成が行なわれるメカニズムについて解説した。さらに、胚のサイズに応じて濃度勾配が変動し、体の形態が維持される「スケーリング」と呼ばれる現象について、自身の研究を踏まえて最新の知見を紹介した。スケーリングの崩壊によって動物の形態の多様性が生み出されるという仮説に、参加者は興味津々の様子だった。

  1. news_151009
  2. 2日間の講座の様子

午後は猪股研究室に移り、同研究室の松川晋也研究員、新實香緒里テクニカルスタッフの指導の下、アフリカツメガエル胚にmRNAをインジェクションして二次胚を誘導する実験を行なった。参加者らは1920年代に発見されたオーガナイザーが、現在では分子レベルで理解されていることを実感することとなった。続いて、本講座のオーガナイザーでもある八杉貞雄名誉教授(首都大学東京)と石井泰雄助教(京都産業大学)、吉氷康矢氏(京都産業大学)の指導の下、ニワトリ胚を用いた実験を行なった。鳥類では、初期胚に見られるヘンゼン結節と呼ばれる部位がオーガナイザーに相当するため、これを別の胚に移植して二次胚を誘導する実験を行なった。また、高校でも実践できる実習として、ニワトリ初期胚の培養・観察法や、活性炭を用いた細胞標識・追跡法を学んだ。

2日目はこれらの実験の結果を観察した。残念ながら明確な二次胚形成が見られないケースが多く、発生学の基礎的な実験の難しさを実感しつつ、その原因について考察した。また、参加者たちは、ニワトリ胚が一晩で様々な器官を形成していく様子や、活性炭で標識した細胞が移動している様子を興味深く見守っていた。薄井芳奈教諭(兵庫県立須磨東高校)からは、ウズラ胚を用いて、これらの実験を高校で実践する工夫について実演があった。

12月にはリカレント講座の実践編として、本講座の参加者が高校生に同様の実験を指導する「高校生のための発生生物学実習講座」も予定されている。

関連リンク 発生生物学リカレント講座 2015
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